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勤務してた施設の話(4)

入所施設送りにしたのは、それ以前にもありました。もともと児童養護施設に入ってて、作業所に入るのと同時にグループホームに入居した人なんですけど、普段はおとなしいというか、ほとんど喋らない人でした。障害は軽そうでしたけど、作業に意欲的に取り組むっていう感じでもなくて、正直よくわからない人っていう感じでした。
作業所では全然問題を起こさなかったんですけど、グループホームでは感情の起伏が激しい面があったようです。入って2、3ヶ月ぐらいだったと思うんですけど、グループホーム世話人に手を上げたらしんですね。何度かあったと聞きました。
そしたら、理事長や施設長は、食事を作ってくれて面倒を見てくれる世話人さんに対して、暴力を振るうとはけしからんって言ってね。結局、入所施設送りですよ。
言葉で伝えられない分、気持ちをうまく発散できないんじゃないかって、だから行動で表現しちゃうって、そういうのがあるような気が、僕はしました。彼はなんでこういうことをするんだろう、とか、彼と一緒に考えるとか、もう少しするべきなんじゃないかと思うんですよね。じっくり向き合ってないなあっていうのも思うし、本人の気持ちじゃなくて、世話人とか支援する側のことばっかり考えてるなあと思いました。

ことあるごとに、そういうことを感じました。
自閉症の人で、この人もグループホームに入居してる人なんですけど、普段は穏やかな人なんですけどね。でも、やっぱり言葉での表現が苦手な感じで、時々イライラするときに大きな声を上げる人でした。グループホームでも、夜中に大声を上げたりしてたらしんです。
で、その人を落ち着かせて、夜に眠るようにするために、昼食後に抗精神病薬を飲ませてたんです。かなり強めの薬でした。でも、彼、その薬を飲もうとしなかったんです。施設長は「世話人さんが困ってるから、頼むから飲んでよ」って、彼に言ってたんです。
それを見て、僕は「なんで薬を飲みながらないんですかねえ?」って言ったんです。そしたら、施設長はキョトンとしてました。そんなこと考えてもいなかったし、考えても仕方がないっていう顔でしたね。
やっぱ抗精神病薬って、副作用があるんですよ。彼が飲んでたぐらいの強い薬だと、どういう副作用かはわからないけど、けっこう強い副作用があるんじゃないかと思うんですよね。副作用の不快感があって、薬を飲みたくなくなってるっていう可能性もあると思うんですよ。
自分も、そこまで強くないけど抗精神病薬飲んで、けっこう副作用があったっていう経験があるから、そういうことが思いつくのかもしれないですけどね。

あと、ダウン症の女の人で、たぶん自閉症も合併してるように見えたんですけど、その人がかなり体格が小さかったんです。その人が、食事の時に足を組みながら食べてたんですね。ある職員が、咎めたっていうほどではなかったんですけど、「足を組みながら食べてるのね」って言ったんですよ。
で、僕、「椅子が低いんじゃないですかねえ」って言ったんですよ。彼女の身長では、椅子の高さは明らかに合ってなかったですし、普通の姿勢だと食べにくいから、足を組んで食べてるんじゃないかって。足を組んだからといって、食べやすくなってるのかどうかはわからないですけど、そういう可能性もあるんじゃないかと思ったんですよ。
でも、僕の言ったこと、完全にスルーされちゃいました。まったく筋違いだと思ったんでしょうし、自分でもまあ筋違いかもしれないとは思いますけど。でも、どうして彼女が足を組んで食べてるのかっていう、そういうの考えたいなあって、僕は思うんですね。だけど、ほかの職員は、そういう視点で考える発想はなかったですね。本人からどういうふうに見えてて、思っててっていう視点じゃなくって、職員目線ばっかりだなあ思ってました。

理事長が、何かにつけて「施設の管理責任が」って言う人だったんですよ。そうなると、責任を自負できるような管理を行うことが優先されていきますよね。実際、僕が働いてる間に、どんどん「管理管理」って感じになっていきました。
初めのうちは、水族館だったり国際会議場だったり、少しだけ遠くに行く時に、はぐれたりしないで地下鉄で行ける人は地下鉄で、歩くのが遅かったりはぐれちゃったりする人は車で行く、っていう感じだったんですよ。でも、理事長の「管理責任」っていう意向で、車の定員いっぱいに車に乗せて、定員から溢れちゃう人だけ地下鉄で行くっていう、どんどんそういう方向になってました。
本人に、地下鉄で行きたいか車で行きたいかっていう、どっちがいいか聞くっていうのも、なかったですね。聞いたとしても関係なくって、結局、管理者の管理上の都合で決めるっていう、それだけでしたね。ほんと何もかもが、そんな感じだったんです。

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